更地の土地の上に賃貸アパートを建てることでの相続対策を考える!

「相続税節税セミナー」と題して開催されているセミナーの中に
アパート建築業者が開催されるものが多くあります。
相続税節税を考えたときに、本を手に取ると
書かれていることが多いのが賃貸アパートを建築することです。
賃貸アパートを建築することで本当に節税になるのか?
建てることでデメリットはないのか?
ということを整理していきたいと思います。
賃貸アパート建築の節税の仕組みを整理する

わしもこの間参加した相続税対策セミナーはアパート建築を扱ってる建設業者が主催しておったな。新しいアパートもすごく増えてきてるのは、やっぱりみんな新しく賃貸アパートを建てておるということかの?
山内さんも肌で感じてらっしゃいましたか…「アパート建設=相続税節税」のようなイメージが先行して最近特に新築アパートの建設は多かったと思います。本当に相続税節税の効果があるのか、一度どのような仕組みで節税となるのか整理していきましょう!
例えば、相続資産の中に駐車場があるとします。
こちらの更地の土地にアパートを建築します。
実は更地の土地から比べると
土地の上に貸家(アパート)が立っている貸家建付地となると
相続税評価額が一般的な住宅地だとだいたい20%減額されます。
さらに、アパートを新築する際には銀行から借り入れを行い、
建築を行いますので、アパートの建物の相続税評価額と残高の差額分が債務控除となり、
相続資産の総額を減少させます。
イメージとしては下記のとおりです。
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【対策前】
土地 相続税評価額 1億円
相続税評価額 1億円
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【対策後】
土地 借地権割合70%の地域だとすると ⇒ 7900万円の評価
建物 1億円で建設するが、借家権割合まで考慮すると ⇒ 4200万円の評価
借入 1億円の借り入れを行っている ⇒ 1億の控除
相続税評価額 2100万円 (およそ7900万円分評価額を減額)
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このように見てみると、やらないだけ損ではないか?
と感じ得しまうような方もいらっしゃるような数字かと思います。
確かにこの間のセミナーでもこの話聞いて、自分もやらなきゃいけないと感じたな。
こんだけメリット合ったら、やればいいんじゃないですか?
でも凄腕FPさんはアパート建築反対ですか?
そうですね。もちろんこの対策が合う方もいらっしゃいますが、しっかり分析してから行う必要があると私は思っています。先ほど示した数字は税法通りに計算をしており、嘘をついているわけでもないんです。しかし、この数字のインパクトによって、本質な話を抜けているんです。その点を見ていきましょう!
アパート建築のデメリット

アパート建築は評価額を減少させる魅力的な相続税対策のように思えますが、
デメリットはないのでしょうか?
その点を整理していきましょう
アパート建築のデメリットは、そもそも「賃貸業」を行うこととなるので、
そのリスクを背負います。
・建物価格への資金を投入しすぎるケース
アパート建築の費用の相場をご存知の方なら問題ありませんが、
多くのケースでは、建物価格が高く、借り入れが多い方が節税効果が大きく見えるため、
過度な設備などで、建物価格を相場より高くついてしまっていることが多くあります。
・長期にわたる運営での空室リスク
新築で建築時は借主がすぐ付くが5年後10年後20年後同じように借主が付く立地なのか?
長期計画の計画数字が甘い数字で計算されていることが多いです。
自分自身でコントロールできるものなのかいっかりと確認すべきです。
・現金化が難しくなる
更地であれば、自宅を建てたい人に売ったり、業者が分譲用地として買取してもらったりと
現金化が比較的しやすいです。
しかし、アパートは投資を検討している人でなければ、購入を検討しませんし、
駅前などの好立地でなければ、なかなか買い手が付きにくいです。
簡単にまとめましたが、
自分自身で「賃貸業」行っていく覚悟が必要となります。
あなたは何のためにアパートを建てるのですか?

この質問に対して、それはもちろん「節税」です!と答える方は、本当にアパート建築を進めていいのか再検討していただいた方がいいかと思います。もしかしたら、相続税対策=節税対策という考えになってしまっている恐れがあります。
特にアパートや不動産が絡む節税対策は、営業をかける業者が多く「節税」に謳った売り文句がならびます。自分自身が偏った考えになっていないか、是非一度考えを整理してみてください!
私が常に意識しているのは、対策を検討する順番です。
1番目に、家族が揉めないようにするための「争族対策」
2番目に、残された家族が困らないように「納税資金対策」
最後に、残せる資産を最大限にしてあげるために「節税対策」
です。
相続対策は「残された家族の幸せを実現するために行う行為」です。
実はアパート建築で失敗をされている方は、
途中で目的を見失い、節税のために節税対策を行って、深みにはまっていってしまいます。
検討される際は、このアパート建築は
①の「争族対策」や②「納税資金対策」が完璧になされたうえで行っている③「節税対策」なのか?
もしくは
①の「争族対策」や②「納税資金対策」がこれで果たせるのか?
という視点で一度検討いただけるといいと思います。
私自身はこのアパート建築スキームは活用する価値があるものだと思っております。
不動産管理会社スキームを合わせたり、的確な方法をとれば、
生まれた収益を②の対策である納税資金として相続人へ分配する対策もとれるはずです。
このように「アパート建築による相続税」は非常に高度な対策であるということを
しっかりと考えていただければと思っております。
まとめ

個人的には不動産を活用したこのようなスキームは使い勝手がよく、
幅広い対策を実現できるものです。
ただ高度な対策であるがゆえに、
業者に任せっぱなしになってしまい、
その業者の利益になる方向へ引っ張られてしまい、
最終的に損をしてしまうことが多い分野でもあります。
是非、検討の際には気を付けていただければと思います。