養子縁組を活用した相続税対策の効果は?

相続対策の方法を検討する際に出てくる方法に
「養子縁組を行い、法定相続人を増やすこと」で相続税の節税を図ることがうたわれていることがあります。
実際に養子縁組を活用した時に、どれくらいの効果があり、
どのようなリスクがあるのかを今回見ていきましょう!
養子縁組と相続の関係性をまずは整理します!

養子縁組は、親のいない子どもに対して利用するものかと思っておったが、相続に何か関係してくるのかね?
山中さん、もちろん関係してきます!養子縁組制度を利用すると子が増えることになり、法定相続人の数が変わります!
ただ山中さんが疑問に思うのももっともだと思います。そもそも、養子縁組制度になじみがない方がほとんどなのではないでしょうか?まずは、養子縁組制度と相続の関係性を1から説明していきますね!
お願いします!
まずは養子縁組制度について、お話します。
養子縁組制度とは、民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、
「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2種類があります。
目的が異なり、要件・効果が違います。
【特別養子縁組】—————————————————————————-
子供の福祉を目的としており、実親と法律上の親子関係を断ち、養親の実子になることです。
*要件*
・実親による養育が難しいなど特別な事情があり、子の利益になると判断され、家庭裁判所の審判を得る
・原則として子は6歳未満、養親は配偶者がいてなおかつ一方が25歳以上であること。
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【普通養子縁組】—————————————————————————-
跡取りなど成人にも使われるような制度で、実親との関係性を維持したまま、養親の養子になることです。
*要件*
・未成年を養子にする場合は、原則家庭裁判所の許可が必要
・養子となる子が15歳未満の場合は、実親の同意が必要
・養親の年長者を養子にはできない
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主に相続対策として活用をされているときにいう「養子縁組」は「普通養子縁組」を指します。
養子縁組が相続税の節税と関係してくるのは、法定相続人の数が変動することがあげられます。
例えば、山中家さんを例にあげると、
じいじ様が亡くなると法定相続人は2人です。
もし養子縁組で養子をとっていた場合、
法定相続人が3人になります。

この場合、
相続税の基礎控除額や生命保険等の非課税限度額にも変化があります。
法定相続人が2人の場合、
相続の基礎控除額=3000万円+法定相続人2人×600万円=4200万円
生命保険金等の非課税限度額=500万円×法定相続人2人=1000万円
法定相続人が3人の場合、
相続の基礎控除額=3000万円+法定相続人3人×600万円=4800万円
生命保険金等の非課税限度額=500万円×法定相続人3人=1500万円
単純計算ですが、最大合計1100万円の控除額・非課税額の差となります。
この差を活用した節税効果を見込み、養子縁組が利用するのが、
「養子縁組による相続税の節税」と言われているものです。
なるほど、養子縁組で養子が増えれば増えるほど節税効果が高まるってことですね!
でも、これだと養子を余分に取る人が増えてきそう…
おっしゃる通りです!養子縁組は節税のための制度ではありませんので、悪用されないように、税法上での制限があります!次にそちらを説明していきます!
相続税法では養子の人数制限がある。

節税のためだけに養子縁組制度を悪用する人が出ないように、相続税法上の法定相続人の人数に数えることができる数に制限を設けています。
制限には実子がいるかいないかで上限数が変わってきます。
実子がいる場合⇒養子は1人まで法定相続人としてカウントできる
実子がいない場合⇒養子は2人まで法定相続人としてカウントできる
もちろん、民法上は養子の数に制限はありませんので、
5人養子縁組で養子をとることも可能です。
ただ、相続が発生した場合には、法定相続人のカウントは上記の基準で行うということです。
※実子の定義
・特別養子縁組で養子となった子は、実子です。
・配偶者の連れ後で養子になった場合も実子として扱います。
養子縁組を使って無理に節税する必要性があるのか?

養子縁組利用するなら、わしも1人法定相続人を増やすことができるということか…
一つ考えてみるのもありかの。
山内さん、ちょっと待ってください!養子縁組はそんな簡単なものではありませんよ!
実際にどんなことが起きえるのか?を考えてからにしてみてください!
節税だけのための養子縁組については、私自身は否定的です。
実際に養子縁組制度を必要として行われるべきものをただ節税になるからと
やってしまうのは少し違うのではないかと思います。
多くのケースであるのが、お孫さんを養子縁組で養子とするケースです。
他人を養子縁組にすることは抵抗がありますが、親族であるお孫さんならと、
取り組む方が多いケースです。
例えば、4800万円の現金が遺産がある父親が被相続人、相続人にAとBという2人の息子がいるというケースで、
さらにAには子供(孫X)がおり、孫Xを養子縁組で父親の養子にしていたケースを想像してください。
相続税の基礎控除=3000万円+法定相続人3人×600万円=4800万円となり、
遺産4800万円-基礎控除4800万円=0円 ⇒ 相続税0円
この場合もちろん、法定相続人が1人増えて節税になっています。
これでよかったで終わればいいですが、
実際に相続をして遺産を分配する必要があります。
もちろん、相続人も増えているため、
各人の遺産割合が減ります。
法定相続に2人であれば、一人2400万円
3人の場合は一人1600万円です。
さらに、これを家族単位で見てみると
A家族 3200万円
B家族 1600万円 となります。
これではB家族が不公平感を感じると思います。
上記のようにわかりやすいと良いのですが、
より登場人物の多いような場合などに、
他の相続人が知らないうちに養子縁組が実行されていて、不公平感が残る相続となり、
残された家族がもめてしまう火種となったりします。
養子縁組に関してトラブルの原因になることも確かなので利用するにしても慎重に進めていくことが必要です。
遺産が多く残してあげたいと思ってやったことが、結果、残った家族を苦しめることになるなんていやだな。しっかりと考えて、家族と相談することが大切かも知らない。
おっしゃる通りです!相続対策のポイントは
①に争族対策
②に納税資金対策
③に節税対策
です。
残る家族を思って行う対策ですので、是非この順番順番を間違えないでもらいたいです!
まとめ

養子縁組を利用した相続税対策は
シミュレーションを行うと節税の成果数字が他の対策大きくなるケースが多いです。
しかも、手続き上で完結するものであり、不動産の購入やアパート建築などの
借入れと等のリスクを伴った対策よりも、安易に検討しがちです。
相続対策は残った家族のために行うものであり、
最後に家族への思いを伝えられる場でもあります。
家族のためにする対策が家族を壊すことがないように
取り組んでいただきたいと思います。










