不動産取引に必要な土壌汚染調査とは

土壌汚染とは、工場等にて使用された有害な化学物質や排水等が地表面から浸透し、土壌に蓄積されている状態をいいます。地下水を通じた汚染の広域拡散につながるケースも多くみられ、様々な経路で人の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

また、工場などが立地しない土地であっても、盛土や埋立てなど敷地内に持ち込まれた土壌が汚染されている場合もあり、不動産の開発や建設工事の際の大きなリスクとなっています。

リスクに対応するためにするのが土壌汚染調査です。詳しく中身を理解していきましょう!

土壌汚染の可能性のある土地とは?

まずは土壌汚染を気にしておくべき土地はどのような土地なのか整理しておきましょう。
・ガソリンスタンドの跡地
・クリーニング屋の跡地
・一部(食品工場など)を除く全ての製造工場の跡地
・農用地(化学肥料等による汚染の可能性がある)の跡地
・ 病院・研究施設等の跡地
・焼却設備等、ダイオキシンの発生する可能性のある場所の跡地
・埋立地
が代表的です。

2種類の土壌汚染調査がある

 土壌汚染調査には、
・ 土壌汚染対策法等に基づき義務付けられている土壌汚染調査
・自主的に行われる土壌汚染調査
の2種類があります。

土壌汚染対策法等に基づき義務付けられている土壌汚染調査では、環境大臣又は都道府県知事が指定した調査機関のみが行い、調査後に作成されます。そして、提出された土壌汚染調査報告書は、公的な証明書となります。

土壌汚染対策法 に基づき、土壌汚染の調査を行わなければならないのは、以下の場合です。
・ 有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき(土対法第3条)。
・ 一定規模以上の土地の形質の変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるとき(土対法第4条)。
・ 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事等が認めるとき(土対法第5条)。

これ以外で行われる場合の調査は土壌汚染調査が自主調査になります。

調査対象となる土壌汚染物質は?

たとえば、「ガソリンスタンド」の跡地などでガソリンの土壌汚染が考えられます。ガソリンには、鉛・ベンゼンといった土壌汚染対策法で調査が義務づけられている「特定有害物質」が含まれているとされています。その他に調査が必要となる土壌汚染物質には26種類あります。

■第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)
1 クロロエチレン
2 四塩化炭素
3 1,2-ジクロロエタン
4 1,1-ジクロロエチレン
5 シス-1,2-ジクロロエチレン
6 1,3-ジクロロプロペン
7 ジクロロメタン
8 テトラクロロエチレン
9 1,1,1-トリクロロエタン
10 1,1,2-トリクロロエタン
11 トリクロロエチレン
12 ベンゼン
■第二種特定有害物質
(重金属等)
13 カドミウム及びその化合物
14 六価クロム化合物
15 シアン化合物
16 水銀及びその化合物
17 セレン及びその化合物
18 鉛及びその化合物
19 砒素及びその化合物
20 ふっ素及びその化合物
21 ほう素及びその化合物
■第三種特定有害物質
(農薬等)
22 シマジン
23 チオベンカルブ
24 チウラム
25 ポリ塩化ビフェニル(PCB)
26 有機りん化合物

全ての物質の調査が必須なわけではない

調査対象として基準が定められている土壌汚染物質は26物質ありますが、必ずしもこれら全ての調査を行う必要はありません。まずは地歴調査を行い、過去から現在まで利用されてきた工場等の用途や利用されてきた物質を確認し、利用されてきたものだけを調査することになります。

 その結果、汚染物質が土対法の基準を上回った時に、汚染の除去等の措置が必要な、要措置区域や、汚染の除去等が必要ではない形質変更時要届出区域に指定されます。

注意が必要なのが、土対法の調査義務のない不動産取引を行う場合でも、不動産業者によっては、取引当事者へ26物質全ての調査をさせてしまうこともあるということです。土対法の汚染基準は厳しいため、ヒ素やフッ素などは、簡単に汚染基準を上回る可能性があります(普通の住宅地でも汚染基準を上回ることもあります)。土壌汚染調査報告書は、公的な書類であるため、土壌汚染調査のデータは引き継がれます。一旦汚染された土地と確認されると、汚染を除去するか、汚染した土地として売買等をすることになりますが、いずれも汚染を除去するために大きな費用が掛かるか、土地の価値が下落するなどの影響を受けます。不動産取引で行う土壌汚染調査は、関係機関と確認しながら慎重に行う必要があります。

まとめ

幸せ家族を目指して、住宅購入・保険・相続などを学ぶ山中家
幸せ家族を目指して、住宅購入・保険・相続などを学ぶ山中家

土壌汚染という言葉は非常にインパクトがある言葉です。自身が所有する不動産もしくは購入しようとしている不動産がが土壌汚染されている可能性もあります。
対策を打つためにはまず、「土壌汚染について知る」ことも大切だと思います。

土壌汚染が判明してからの行動では大きな損害が生じた後かもしれません。
早めに知識を付けておきましょう!